暑い日が続いた。店を閉めて外に出ると、ジー、という虫の声。

春はどこに行ったのだろうと思っていたらぐっと気温が下がる。

そのうえ雨模様。

本屋にはこれくらいの天気が丁度いいのかもしれない。

ちらほらとお客さんも入る。本は動かなかったが、お茶をしながら喋ったり。

喫茶の日だったとのことで、だから本が売れなかったんだ、とこじつける。

まあ、うちはそんなもん。


時々、ここが何のお店かわからなくなる。


昨日は、もう夏が来るのかと思うほど気温が上がり、歩いて来たと言うお客さんがなかなかに汗をかいていた。

沸かしたお茶はまだ冷めていない。

アイスコーヒーはまだ早いかと思い準備もしていない。


『…良かったら、ノンアルコールビール飲みませんか?お金とりませんので』


つまみになるようなものもなかったので、知り合いから差し入れでもらっていた柿ピーを添える。ついでにわたしも飲む。


昼間っからプチ飲み会気分を味わったあとは、ビニール袋をひっさげた顔見知りのお客さん。

「これ、あげます」

と袋から出てきたのは前回ここで買った本。

基本的にうちは新刊書店であり、古物商許可も得ていないため買取はできないと話すも、特にそういった要望はなく笑って渡される。ありがとうございます、とわたしも笑いながら受け取る。受け取った本はほとんど読んだ形跡が見られない。そしてまた新しい本を買っていく。

なんだかよくわからないが、新しい経済のようなものがうまれる。


この前は、

「ここはビデオがありますか?」

と入ってきたお客さんもいた。

どう見ても、ない。

どういったビデオをご所望で?と聞きたかったが、我慢した。


やっぱり、何のお店かよくわからない。

まあ、うちはそんなもん。

あわい堂

本と珈琲のあるところ

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